双子の運命~異なった環境で育った双子はどうなる?

双子の親にとってすごく興味深い追跡調査の結果がありましたので、ご紹介します。
生まれてすぐ離れ離れになった一卵性双生児が、長い年月を経て再会したとき、彼らの好みや生活態度はどのようであったか、一つの実例を紹介しよう。
ジャックとオスカーという一卵性双生児の話である。
この二人は、第二次大戦が始まるすこし前、ドイツに生まれた。
そして、生後6カ月で二人は離れ離れになる運命にあった。
ジャックは、ユダヤ人の父と一緒に戦争が終わるまでトリニダードに住んでいた。その後、新興国家イスラエルに移住しキブツで働く。
それから、アメリカに住いを移すまで、イスラエルで兵士をしていた。
一方オスカーは、ナチス時代のドイツで、カトリック信者の母のもとで成長した。
彼は、ヒットラー・ユーゲントの一員にもなった。
そして、ナチスドイツの第三帝国の崩壊と戦後の連邦共和国の成立を、体験することになった。
ジャックは、アメリカ・カルフォルニア州のキユーラ・ヴィスタで電気器具商を営んでいた。オスカーは、ドイツで工業エンジニアとして働いていた。
この二人が47年ぶりに再会することになったのである。
勿論この二人の外見は、びっくりする程酷似していた。
全く連った生活環境に育ったにもかかわらずである。
ジャックとオスカーは、身長、体重とも全く同じであった。
視力は二人とも悪かったが、一方は左目で、他方は右目という具合であった。
ジャックとオスカーの顔かたちは、勿論そっくりであったが、口ひげを同じようにはやし、問じような眼鏡をかけているので、その類似性にますます拍車をかけているのであった。
ジャックは貸家であり、オスカーは一戸建て住宅を所有していたが、両方とも大柄の模様の壁紙が目立っており、家具調度の趣向もよく似かよっていた。
二人は、手首にゴム輪をはめているし、ライターにもゴムひもをまく。
雑誌は左手で持って、終りのぺージから、前の方へとめくっていく。
朝食の食べ方をいえば、二人とも同じようなやり方で、トーストをコーヒーの中にひたし、バターを極端に厚めにつけるのである。
さらに、二人とも、かなりの目立ちたがり屋である。
いずれも、他の人連と比較的静かな場所に座っているとき、たとえば大きな音を立ててくしゃみをするなどして、そこに居合わせる人達をびっくりさせるといった性格の持ち主なのてある。
ただ、女性に関してはやや違っていた。
ジャックは、離婚歴があるものの、現在は新しい妻、四人の子供と平和な生活をしている。
オスカーは、長いこと、幸福な結婚生活を送り、二人の子供をつくっている。妻の選択については、あまり共通点はない。
このように、生活歴の全く異る一卵性双生児において、極めて類似しているものから、あまり似かよったところがない点などさまざまである。
体格、癖、無意識行動、趣味・趣向といったものは、遺伝規定性が強そうである。
いわゆる性格についての双生児研究の結果によると、一卵性双生児の性格の核心というものは明らかに似ていることが知られている。
また性格を構造的に考えると、一卵性でほとんど常に一致している構造部分から、かなりの不一致を示す構造部分まであることも分っている。
一般に、身体的機能に近い活動性は、遺伝規定性が強く、環境に対する抵抗性の強い構造部分である。
この上の構造として、根本気分、情動、意志、自我感情があげられるが、この順で環境による影響を受けやすくなるといわれている。
また、性格類型の違いによって、一卵性双生児の違いに差の大小がみられる。諧調性性格と自閉的性格は、環境の影響に対して比較的に安定している。
自己不信、過敏被刺激性、意志薄弱などの類型は、比較的に不安定であるという。
ジャックとオスカ-は、どうやら諧調性性格とよばれる性格の持主のようである。
また、配偶者の選択についても、遺伝型は、重要な働きをしないようであり、ホッとする話である。
現代のエスプリ No.207 「遺伝と環境」(至文堂、1984刊)の「双生児研究」の解説より引用

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